コラム

契約書にサインする前に    【2022年事務所ニュース夏号】

 弁護士 向川 純平

 民間における売買などの取引、その他の社会的関係、経済的関係については、語弊を恐れずに言えば、関係者の「お互いの合意」によって成立し、そこで決められたルールを履行していくことによって世の中は動いている。我が国の法は、この合意を原則として尊重・保護することを建前としている。これを私的自治の原則という。
 さて、この「お互いの合意」の典型が、いわゆる「契約」というものである。契約は口頭の合意でも成立するが、後の証拠という点で不安である。そこで、大事な合意であれば「契約書」を作ることになる。
 弁護士として言いたいのは、自分で契約書を作ろうと思ったとき、相手から契約書をもらったとき、何か疑問があったら契約書を締結する前に法律相談してほしいということである。
 契約書締結後にトラブルになって法律相談を受けても、その契約書に書かれたことは「お互いの合意」であり保護されているのだから、後で「しまった!」と思っても覆すことが難しい場合があるからである。
 事前に相談があれば、契約書の文言だけでなく、契約の経緯、目的、当事者の関係性、消費者法や行政法規などのチェックなどを通して、後に起こりそうなリスクを見積もり、トラブルを事前に回避するよう契約書の文言修正提案が可能である。
 近年の民法改正により契約書の重要性は高まっている。備えあれば憂いなし。契約書のチェックは、当事務所でももちろん行っておりますので、遠慮なくご相談ください。