コロナウィルス関連 法律相談 Q&A

    新型コロナウイルスの感染が日本を含む世界中で広まっています。感染の拡大に伴い、職場や家庭その他の社会生活に大きな影響があり、さまざまな法的問題も発生しています。
    下記では、コロナウイルスに関連する法的問題のうち、多く相談が寄せられる事項について、その一般的な回答を載せていますので、ご参照ください。ただし、個別のケースはそれぞれ回答も異なってくる場合がありますので、ご自身のケースについて知りたいかたは、当事務所に遠慮なくご連絡下さい。
     (下記の回答は2020年6月30日時点において作成されたものです)
  • 労働問題1コロナウィルスの影響で、休業となり、ついには解雇を言い渡されてしまいました。休業なってからは給料も払われておらず、生活が苦しくなっています。何か法的な手段は取ることができるでしょうか

    緊急事態宣言下であっても、休業を要請された施設でなければ、営業を継続できます。それにもかかわらずあえて休業をしたことに対しては、「債権者の責に帰すべき事由」(民法536条2項)があるとして、休業期間中の賃金100%を請求しましょう。
    休業を要請された施設であったとしても、少なくとも平均賃金の60%の休業手当(労働基準法26条)を請求することができます。
    また、アルバイトやパートのシフトに入れてもらえない(シフトカット)の場合でも、例えば、それまでは週3日シフトに入っていたという労働実態があれば、少なくとも週3日はシフトに入れる労働契約であったことを前提に、週あたり3日分の賃金や休業手当を請求することができます。
    労働者が休業させられたにもかかわらず、使用者が賃金や休業手当を支払わない場合、「雇用調整助成金」を労働者が直接申請できる制度が導入される見込みです。

    コロナウィルスを理由とする解雇は、労働者に責任のない、使用者の経営判断に基づく「整理解雇」と言います。整理解雇が有効となるためには①人員削減の必要性があること、②使用者が解雇回避努力を尽くしたこと、③解雇対象人選基準が合理的であること、④労働者への説明、協議を尽くしたこと、が必要です。特に、政府は事業継続のため各種助成金制度を導入しており、これらの利用もせずにいきなり解雇をすることは許されません。
    期間の定めのある労働契約について、期間満了時点で更新しない「雇止め」の場合にも、長期間繰り返し更新されてきた等、更新を期待することについて合理的な理由がある場合には、整理解雇と同様に雇止めが許されない場合があります。

    これらの労働問題でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

  • 労働問題2特別養護老人ホームで働いています。つい先日新型コロナウィルスの患者が利用者さんから出てしまいました。マスクの着用は義務付けられましたが、「感染に注意しながら勤務するように」と言われているだけで、通常の体制での勤務が継続しています。自分が感染してしまうのではないかと、とても不安です。法人に対してどのようなことを求めることができますか。また、仮に私も感染してしまった場合、どのような手当を受けることができるのでしょうか。

    事業者は、労働災害等を防止する義務があり、また、快適な職場とするよう努める義務があります(労働安全衛生法3条1項)。労働契約法上も、使用者の労働者に対する安全配慮義務があります(同法5条)。新型コロナの感染拡大とこれによる健康への脅威が大きな問題となっている中、使用者は、職場における感染リスクを適切に評価し、対策を講じることが必要です。

    そこで、職場内で議論を行い、使用者には、具体的に講じた対策を公表させるべきです。特に、衛生委員会の設置が義務付けられている事業場では、使用者に衛生委員会の開催を求め、具体的な改善策を提案してみて下さい。例えば、時差出勤やテレワークの導入(事務職員の場合)、消毒液の設置や職場の換気などが挙げられます。

    要求の方法ですが、職場に労働組合がある場合、労働組合に相談して、使用者に団体交渉を申し入れて団体交渉を行い、その交渉を通じて、職場の衛生環境の改善を求めましょう。職場に労働組合がない場合、一人でこのような提案をしても、会社が聞き入れてくれないかもしれません。職場の皆さんで話し合いをして、職場の意見として、具体的に会社に提案したり、外部の労働組合に相談して加入し、労働組合として会社に交渉を申し入れてみて下さい。

    いくら改善を求めても使用者が何ら改善措置をとらず安全配慮をしない場合には、あえてテレワークなどの方法で労務提供してしまうことも考えられます。きちんと感染防止措置を取り得るにもかかわらず、会社が何ら検討もしないで労務提供を拒否したような場合には、賃金全額を請求できる可能性もありますから、ぜひご相談下さい。また、安全配慮を全く会社がしてくれずやむを得ず会社を欠勤しても、これを理由に懲戒したり解雇したりすることは無効と考えられますので、やはりご相談ください。

    万が一感染してしまった場合には、傷病手当金の受給を行えるほか、業務に起因して感染したことが証明できれば、労災による給付を受けることもできます。これらの手続については、労働者にとって使いやすくなるよう、毎月のように改正が行われていますので、ご不明な点がございましたらぜひご相談ください。

  • 夫婦の問題もともと夫婦仲が悪かったのですが、この自粛生活でどちらも在宅勤務が多くなり、イライラがたまったのか配偶者から暴力を振るわれるようになってしまいました。もう逃げ出したいがどうしたらよいでしょうか。

    一刻も早く逃げ出したいという気持ちは,分かりました。
    しかし,何もかも捨てて,身一つで出るのが良いかどうかは,あなたの置かれている状況によって異なると思います。
    もしも,相手方の暴力があなたにとって生命の危険を感じさせるような程度に達している場合には,何はさておきご自身の身の安全を確保する必要がありますから,警察に通報して,自治体のDV相談窓口に駆けこんでください。
    そこまでの緊急性がない場合には,別居と離婚に向けた準備をするのが良いでしょう。
    仮に,相手方が聞く耳を持たないのではないかと予想されても,一度は正面から離婚したいと話を持ちかけるのが,原則です。この問題提起をしているか否かは,相手方の考え方感じ方が違うなりに最終的に離婚に応じてくれるかどうかについて,大きな影響を及ぼします。
    急いで駆け込む場合も、一度は話し合いを持つ場合も、弁護士はあなたの相談を真摯に受け止めますから、一人で結論を出してしまう前に、ご連絡ください。

    話し合いする場合のポイント
    1. 子どもの親権
      離婚について話ができそうであれば,二人の間の未成年の子どもをどちらが監護養育するかを決めます。監護養育する人が親権者になるべきであり、監護教育と親権を分けるという例は、近年ますます減少の一途をたどっています。
    2. 養育費
      子どもの監護養育をする人が決まれば、次に養育費を計算します。これについては、それぞれの名目賃金を基準にして計算をする「算定表」が広く用いられています。最高裁判所のホームページを検索すれば,算定表そのものとその計算の仕方が説明されています。それ以外の定め方も、お互いに納得すればかまいませんが、裁判所では算定表による計算以外の例が、見当たらなくなっています。
    3. 財産分与
      夫婦共同で形成した財産がある場合には、それをすべてお互いに確認し合って、合計した物を2分の1ずつ分けることになります。対象となる財産として代表的なものは、自宅などの不動産、預貯金、金融資産、生命保険,自動車など高額な動産,退職金等です。現物で分ける場合でも、価値的に平等になるように、金銭の評価を一度は行います。不動産については、時価を評価し、抵当権が設定されている住宅ローンの残額を差し引いて計算します。生命保険の場合は、保険料や受け取りうる金額ではなく、別居の時点で仮に解約をしたらいくら解約返戻金が戻ってくるかで計算します。退職金については、別居の時点で仮に退職をしたらいくらの退職金が支払われるかを試算します。いずれについても、婚姻前に形成した部分は、割合または実額で差し引きます。これらを合算して、二等分して金額を出します。その金額の範囲内で、現物を取得することについて双方が合意すれば現物で分け、合意ができない場合には、金銭で精算します。
      財産分与の場合は、夫婦共同して形成した資産の分割という考え方なので、金銭評価の基準時は別居開始時になります。
    4. 年金分割
      厚生年金(旧共済年金も含む)に加入している人の場合は、それぞれが法律上の結婚から法律上の離婚成立までの期間にかけている年金掛け金を分割することができます。年金については、上記の財産分与と異なり、法律上の離婚成立時が基準時となります。社会保険庁に行って、年金分割のための「情報通知書」を取得してください。分割の割合は、原則として0,5です。
    5. 慰謝料
      慰謝料について話し合いでまとまることは、あまりないと思いますが、当事者が合意すれば、可能です。
    話し合いがまとまらない場合

    両当事者が話し合っても話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に申し出て、夫婦関係調整調停(離婚)の手続きを利用することをお勧めします。調停は、裁判とは異なり、非公開の手続きであり、両当事者が話したことが外部に出ることはありません。裁判所は、裁判官と男性女性各1名の調停委員、合計3名からなる調停委員会を構成し、話し合いの手伝いをします。裁判とは異なり、判例と異なる合意を形成することも有効です。 しかし、両当事者の意見が著しく異なる場合には、仮に裁判になればどういう結論になるのかを想定して、その内容をあらかじめ理解して置いた方が良いと思います。
    調停は、弁護士に依頼しないでご本人が申し立てて手続きをすることが十分可能ですが、仮に、合意の形成が困難であることが予想されるときには、もしも裁判にまで発展したらどのような結論になるかを知っておくためにも、弁護士に相談をした上、調停申し立てに踏み切ることを、おすすめします。

    既に別居した方について、定額給付金など

    一人あたり10万円の定額給付金は、原則として、世帯ごとに、世帯主の銀行口座に振り込む形で給付されます。
    既に別居して家計を別にしている場合、住民票も別になっていれば、離婚が成立していなくてもそれぞれが世帯主ですので、特段の手続きは不要です。
    DV等があって住民票を移動させないままに住所秘匿をしている場合の取り扱いについて、弁護士会や市民団体の申し入れを受けて、住民用を分離していなくても世帯主とは別に受け取れる制度に改善されましたので、申請に当たってはその旨の手続きをとれば、きちんと支払が行われることになっています。

  • 賃貸借個人で飲食店を経営しています。緊急事態宣言を受け休業要請がなされたため、お昼時にしか営業ができなくなり、その期間売り上げは70%減になり、店舗の家賃が払えなくなり1か月分滞納してしまいました。大家さんに家賃を減免してもらうことはできるでしょうか。また、支払いを1か月滞納してしまっことで退去義務があるのでしょうか。

    まず,大家さんに家賃を減免してもらうには,賃貸借契約書に別段の定めがない限りは大家さんの同意がないといけませんので,減免が可能かどうか交渉しましょう。なお,国道交通省から令和2年3月31日付で不動産関連団体に対して,新型コロナウイルス感染症の影響により、賃料の支払いが困難な事情があるテナントには、その置かれた状況に配慮し、賃料の支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置の実施を検討するよう要請がされました。
    家賃の滞納によって退去義務が発生する場合というのは,借主に債務不履行責任がある場合ですが,貸主が借主に対して家賃の不払いを理由に明渡しを求める場合には,当事者間の信頼関係が破壊されたと評価できる必要があるとされています。最終的には個別の事案によることにはなりますが,新型コロナウィルス感染症の影響による営業不振によって3ヶ月程度の滞納が生じても,直ちに信頼関係が破壊されたとは認められないケ-スもあると思われます。
    また,持続化給付金や日本政策金融公庫などの金融機関による融資金を賃料の支払いに充てることもでき,第2次補正予算によって5月から12月までの売り上げが大幅に減少した事業者に対して家賃補助がなされることが決まりましたので,1ヶ月の滞納があったからといって焦って対応せずに専門家にご相談ください。

  • 消費者問題1ちょうど4日前のことになりますが、インターネットの通信販売で「コロナに負けない体を作る!!●●成分1000ミリグラム配合!」とうたった健康食品が売られているのを見て、不安にかられて10万円分クレジットカードを使って購入してしまいました。ふと冷静になりこんなものはいらないと思い、契約をなかったことにしてお金を取り戻したいのですがどうしたら良いでしょうか。

    商品を受け取ってから8日以内であれば、特定商取引法に基づき契約を解除することができます。この場合、返品のための送料はご自身の負担となります。ただし、事業者が予め広告で返品に関する特約を表示していた場合には、それに従うことになりますので、そのような特約があるかどうかまずはご確認ください。
    また、新型コロナウイルスについては、その性状特性が必ずしも明らかでなく、民間施設における試験等も不可能な現状では、新型コロナウイルスに関する予防効果をうたうウィルス予防商品は、現段階では客観性・合理性を欠くと考えられます。そのため、「コロナに効く!●●成分1000ミリグラム配合!」とうたうことは、消費者契約法上の「不実告知」(商品の効果など重要事項について事実と異なることを告げること)にあたる可能性が高く、この場合には契約を取り消すことができます。
    ご自身の契約が解除や取消しの対象となるか、または事業者との連絡の取り方など、ご不安な点がありましたらお気軽にご相談ください。

  • 消費者問題2結婚式を挙げる予定だったが、コロナが心配でキャンセルしたいのですが、「自己都合のキャンセルなのだから」と言われて多額のキャンセル料を要求されてしまいました。払わなければならないのでしょうか?

    まずは、契約書の記載を確認しましょう。自己都合のキャンセルの場合のキャンセル料についてどのような記載がなされていますか?また不可抗力による開催不能の場合の取り決めもあるでしょうか?
    ちなみに業界団体のモデル約款では自己都合解約についてのキャンセルポリシーの基準が示され、不可抗力のキャンセルの場合はキャンセル料がかからないとされています。そこで、不可抗力と自己都合のキャンセルで違いがある場合を前提に考えてみましょう。
    社会通念上、結婚式を挙げることができないと判断される場合には、不可抗力となるので通常キャンセル料は発生しないと考えられます。そこで、今回の予定していた結婚式が、自己都合なのか、不可抗力なのかという点が問題となります。
    そうなると、いつの時点の結婚式をキャンセルせざるを得なかったのかによって結論が変ってくることも考えられます。緊急事態宣言が発令された時期であれば、政府から外出自粛や家族以外での会食をやめるよう求められているわけですから、不可抗力であるとされると考えられます。他方、非常事態宣言前や解除後はどうなのでしょうか?三密を避けるための様々な自粛要請もでているかその程度や広がりなど、その時点その時点及び、結婚式の規模や形式なども鑑みて、不可抗力からどうかを判断していくことが求められます。
    また、仮に、不可抗力ではなく自己都合と考えざるを得ない場合でも、キャンセル料については、まず契約書に記載されているキャンセル料を確認し、その金額が相当かどうかを検討する必要があります。キャンセル料がその事業者に生じる平均的な損害の額を超えると考えられるような金額を求めるような条項は無効です(消費者契約法第9条1号)。
    キャンセル料を請求されたら、言われるままですぐにあきらめず、専門家に相談してから決めるということも大事なことです。

  • インターネットの問題一時期新型コロナウィルスによる肺炎にり患し、完治して生活を再開していたのですが、SNSで匿名のアカウントから「あいつはコロナにかかってウィルスをまき散らしている。一生隔離すべきだ」などと書き込まれました。公表したこともなかったのでとてもショックです。どのような法的措置を取ることができるでしょうか。

    今回のコロナ禍において、感染症のり患者、医療従事者に対する心ない差別や偏見による言動が見られることがありました。わが国の歴史上、感染症との戦いは差別との戦いでもあります。感染症法では、国民の責務として「感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。」とされており、設問の言動がこの法の趣旨に反するものであることに疑いはありません。また、一般的にも他者の病歴をみだりに公開することはプライバシー権の侵害にあたります。
    今日の問題として、これらの言動がインターネット上で、かつ匿名で行われるようになったことです。コロナ問題に限らず、インターネット上の誹謗中傷は大きな社会問題となっています。
    設問のような法的な権利侵害(名誉毀損、プライバシー侵害、侮辱行為など)が含まれる書きこみがあった場合、まずはSNSを運営するプロバイダに対して削除請求を行い、当該の書き込みを削除するよう求めます。また、匿名の発信者を特定するためには発信者情報開示請求という請求権がプロバイダ責任制限法に定められており、裁判手続きを経て発信者の情報の開示を受けます。その後に、発信者に対して損害賠償を請求するなどの法的対応を行うことになります。
    当該表現に権利侵害性があるかどうかの判断は難しく、複雑な手続きの理解も必要な分野です。また、証拠保全の観点から迅速に動く必要もあります。お早めに弁護士にご相談ください。