コラム

私のアルフレード

弁護士 小島 周一

 ニュー・シネマ・パラダイスを30年ぶりくらいに観た。前は、可愛いと絶賛のトトを、それほど可愛いと思えず、大して印象にも残っていなかった。今回観ていて、途中からしみじみと涙が流れ、以前の自分はこの映画を理解する年ではなかったんだと実感した。
 しゅうぼうじいちゃんが亡くなった。母の弟で、私より20歳年上。甥の私を、幼い頃から「周坊」「周坊」と呼んで可愛がってくれた。だから「しゅうぼうおじちゃん」→「しゅうぼうじいちゃん」。
 野鳥を好きになったのは、一緒に霞網で小鳥を取りにいったり、剥製屋さんのしゅうぼうじいちゃんが小鳥を飼っていたからだし、磯釣り、喫茶店、花札、麻雀、10代前半の男の子が好きなことを全部教えてくれた。歌が上手くて声もよく、瞳はちょっとゲバラに似ていた。
 私が2001年に弁護士会の副会長になったときは、しゅうぼうじいちゃんを始め、母方の叔父さん叔母さんが、お祝いにスーツの生地を送ってくれた。
 ところが私は、そんなしゅうぼうじいちゃんと、15年以上、会うこともなく、何時でも会えるような気分で、忙しい日々を過ごしていた。
 従兄弟の友広君から電話をもらったとき、もう、しゅうぼうじいちゃんは遠くに行ってしまっていて、しかも、いかにもしゅうぼうじいちゃんらしく「葬儀はやるな」と言って旅立ったそうだ。
 もう一度、しゅうぼうじいちゃんと、高校時代のように「無限とは」とか「運動としての釣りの会とは」とか話したかった。そんなことを考えたらまた涙が出た。