コラム

味噌なめたか   【2023年事務所ニュース新春号】

弁護士 小島 周一

 大学生の頃から、バイクにテントを積んでふらふらと何泊かソロツーリングをしていたが、50代になると卒業して、今度はマットとシュラフを積んだ車中泊をするようになった。
 車で出発すると、ナビなんかセットしない。その日の宿泊場所も決めない。気の赴くまま走り、途中で面白そうなものを見つけると寄り道する。夕方になった頃、最寄りの道の駅などを見つけ、そこに車を止める。
 新潟県南魚沼市の県道をのんびり走っていたとき、電柱に「味噌なめたか」という看板が続いていた。ちょっと走ったら右折の矢印がある。何だろうと寄ってみた。
 そこは立派な禅宗のお寺で、広い庭は綺麗に掃き清められている。そこにあった「味噌なめたか」の縁起を読むと、戦国時代、上杉北条の争いに巻き込まれて寺が焼かれたとき、僧侶が経典を味噌桶に突っ込んで戦火から守ったとある。その後、経典を守った有難い味噌だ、「味噌なめたか」と、人々がお寺の味噌を求めるようになったそうだ。今ではその「有難い」味噌が瓶詰めされて、お寺でたくさん売られていた。
 有名な観光スポットに気づかず通り過ぎることも多いけれど、こういう偶然の出会いと発見があるから、気ままで無計画な車中泊は面白い。