コラム

ローカル線から2   【2023年事務所ニュース新春号】

弁護士 佐藤 正知

 昨秋、北海道で開催された日弁連人権擁護大会に参加するのにあわせて、廃止が決定された各線を調査してきた。いずれも本線なのでローカル線からと言うと語弊があるが。
 留萌本線深川始発の留萌行は、深川着の折り返し運転で、高校生が多く降車してきた。かつては留萌港との間で石炭、木材、海産物の運搬で賑わったが、貨物列車が走らなくなって久しい。ちなみに恵比島駅は朝ドラすずらんのロケ地として有名で、貨物コンテナ改造の駅舎より残されたセットの明日萌駅舎の方が立派。平行する深川留萌自動車道は、収入料金から管理費を差し引くと年9千万の赤字だそうな。当然建設費度外視。同じ交通インフラなのに道路には甘い。道路にだけ族議員がいるからか。
 根室本線富良野~新得間は、2016年台風被災以降一部区間不通、土砂崩れ現場は路盤ごと流されたまま。映画鉄道員幌舞駅ロケ地として有名な幾寅駅は観光地として整備されているが、隣の落合駅近辺は線路に立派な木が生えている始末。
 北海道外に住む者にとっても問題なのが函館本線新函館北斗~長万部間。廃止決定された長万部~小樽間と異なり廃止が取り沙汰されている段階であるが、廃止されると北海道と本州を結ぶ貨物鉄道の大動脈が分断されジャガイモ、玉葱等農産物の価格上昇は必至。
 生前中曽根康弘自身が公言したとおり、国鉄分割民営化の意図は、社会党の支持母体である総評の中心だった国労を崩壊させる点にあった。ローカル線存続など眼中になかったのだろう。自民党が1986年に全国紙に掲載した広告では、民営分割ご安心ください、ローカル線もなくなりません、と謳われていたが。所詮政権与党のプロパガンダなどこのようなものである。