コラム

「フリー」ではない「フリーランス」【2023年事務所ニュース 新春号】

弁護士 有野 健太

 昨今、会社員として企業に雇用されるのはやめて、「フリーランス」として独立し「自由な働き方」をしようと言われることがある。
 もちろん、真に、自分のスキルを活かして、「自由な働き方」ができるのであれば、それは望ましいことだろう。
 しかしながら、現在、「自由な働き方」とは名ばかりで、企業から会社員さながらの指示・拘束がなされているにもかかわらず、契約の形式だけ「フリーランス」(法的には「業務委託契約」)とされ、会社員であれば適用されるはずの労働法の規制が潜脱されるという事案が頻繁している。
 アマゾンの配達員の働き方がその最たる例だ。
 彼らは、アプリとAIによって、配達先や配達時間、荷物量等を具体的に指示された上、契約企業から出勤時刻の指定や勤務姿勢等について細かい指導注意等を受けている。さらには、「労働者」ではないという建前で、労働法の上限規制を超える残業をさせられた上、残業代も支払われていない。もちろん、拒否すれば契約を解除されてしまうため、断る自由はない。
 このような全く「フリー」(自由)ではない「フリーランス」は、「偽装雇用」「名ばかり個人事業主」などと呼ばれ、本来は、労働法に則って、然るべき規制がなされるべきものである。
 新しい問題ゆえ困難もあるが、微力ながら「偽装雇用」の撲滅に尽力していきたい。