コラム

2023年事務所ニュース夏号

巻頭言

 横浜法律事務所は、一九六三年に、横山國男、三野研太郞、陶山圭之輔という三人の弁護士によって、弱い立場に立たされている人の力になるということを一致点として創立されました。以来、労働事件をはじめとして、様々な場面で、人間としての尊厳を回復しようとする方々を支えてきました。
 一九六三年当時日本にいた外国人は六五万一五七四人でした。当事務所では、創立以来外国籍の依頼者を持ち、強制送還停止・収容停止の保全処分という先駆的な事件で成果を上げています。もっとも、この頃は、当事者団体とコアな支援者だけで闘っていたという印象も拭えません。
 今年三月末、在留外国人は三〇七万五二一三人と過去最高に達しましたが、この六月、国・入管は、難民認定を三回以上申請している人については、手続き中でも強制送還できるように法律を改悪してしまいました。これは、日本も加盟している難民条約三三条一項に定める「生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない」という「ノン・ルフールマン原則」に明確に違反しています。しかも、欧米諸国が申請者のうち二割から六割強の難民認定をしているのに、日本では一%足らずしか認定していません。本来難民認定されるべき人が認定されていない状況の下で、申請中でも強制送還されてしまう結果になります。その上、在留資格がなければ、事情に関わらず、裁判所の審査もなく無期限に収容される「全件収容主義」と、一切の収入を伴う仕事を禁じる規制はそのままです。文字通りの、人命軽視であり人権侵害です。
 しかし、改悪法案の審議中、市民の側では、これまでとは比較にならないくらい広汎な人々が関心を持ち、行動しました。渋谷の抗議デモに七〇〇〇人以上の人が集まり、年齢も立場も多様な人々が入れ替わり立ち替わり一〇〇日近く国会前で抗議のシットインを続けました。自分の住んでいる地元の駅で、少人数でも抗議のスタンディングを続ける人もいました。その結果、マスメディアにも頻繁に大きく取り上げられ、映画もテレビドラマも創られました。各地の弁護士会や各弁護士会連合会が、反対の声明をあげるだけではなく、デモを繰り返し、改悪後にもデモを行っています。
 私たちも、この度の改悪にめげることなく、国籍や在留資格に拘わらず人間が人間らしく尊重される社会を実現するために、ともに前に進みます。