2024年事務所ニュース 新春号
巻頭言
 昨年一〇月七日、ガザを本拠地とするイスラム勢力ハマスが行った民間人に対する無差別攻撃と拉致をきっかけに、イスラエル軍のガザ地区への攻撃が激化しています。現在のところ停戦の目途はたっていません。
 イスラエル軍の攻撃は、難民キャンプへの連続的な空爆、患者を乗せた救急車の車列へのミサイル攻撃等大規模なもので、多数の民間人が犠牲となっています。また、イスラエル軍は、ガザを封鎖し、電気、水、食料、医薬品の供給を妨げ、多くの民間人の命が危険にさらされています。特に多くの子どもたちが犠牲となり、ユニセフはガザの状況について「子どもたちの墓場と化し、人々の生き地獄となっている」とまで述べています。
 ハマスの行った無差別攻撃と拉致は、許されない国際法違反です。同時にそれに対し「ハマスを殲滅する」と連日空爆をして子どもを含む多数の犠牲を出し、学校や病院まで攻撃しているイスラエルの行為もまた国際法違反です。
 現在の事態の背景には、イスラエルが一九六七年以来、ヨルダン川西岸とガザ地区を占領下におき、住民の強制排除を行いながら入植を拡大してきたことがあります。イスラエルはガザ地区に対しては二〇〇七年以来封鎖政策をとり、多くのパレスチナ人が犠牲を強いられてきましたが、これらも国連の決定と国際法に違反する行為です。
 第二次世界大戦後、国際社会は武力行使を厳しく制限し、国際法や国連決議等による法の支配を強化することで国際平和をつくろうと努力してきました。
 今回の事態を受けて、二〇二三年一〇月二七日、国連総会は緊急特別会合で、イスラエルとイスラム組織ハマスの交戦が続くガザ地区に関して「即時、永続可能、持続的な人道的休戦」を求める決議を採択しました。採択に必要な投票総数の三分の二以上の一二一カ国が賛成しました。
 しかし、こうした国際社会の取り組みに対して、日本は棄権し、積極的役割を果たせていません。なお、同年一一月八日に発表された主要七カ国(G7)外相会合の共同声明に日本も議長国として参加していますが、同声明はイスラエルによるガザ地区への攻撃をめぐって、イスラエルの「自衛権を強調する」と明記し、「停戦」は求めていないものです。
日本国憲法には、戦争放棄を定めた九条があり、前文では国際協調主義が謳われています。こういった憲法をもつ日本政府は、国際社会と一致して双方による停戦と人質解放、ガザ市民への人道支援に向かうよう全力を尽くすべきです。特に、日本は、これまでイスラエルともアラブ諸国とも友好関係を持ってきました。いまこそ、日本国憲法の理念にもとづく平和外交でこの危機を乗り超えるべく積極的役割を果たすべきではないでしょうか。






