コラム

宿は適当に探してくれ 【2024年事務所ニュース 新春号】

弁護士 小島周一

 
 2023年11月、日本労働弁護団総会で金沢を訪れた。ちょうど40年前の1983年10月にも私は金沢を訪れている。
 当時司法修習生だった私は、翌年4月に弁護士になるのに、まだ入る事務所も決めていなかった。そんな中、横浜法律事務所の木村和夫弁護士から「金沢で日弁連の人権大会があるけど、運転手をするなら連れて行ってやる」と言われ、「やります」と即答した。ボルボを運転して、木村、関、稲生の3弁護士と共に金沢に着くと、木村先生たちは「じゃあ、我々は宿に行くから、小島君は適当に宿を探して泊まりなさい」と言って去っていった。
 宿にも泊まれると思っていた私はびっくりしたが、確かに「連れて行ってやる」としか言われていない。宿を探したが、人権大会で満杯だ。「『連れは後から来ます』と言ってラブホに泊まるか」と考えていたら、人権大会に来ていた横浜法律事務所の三野研太郎弁護士が「俺は四高時代の下宿先に泊まるけど、小島君も来るかい」と言ってくれ、その晩はお茶屋遊びのお供もさせてもらった。
 翌年4月、私は横浜法律事務所に入るのだが、私を入れるか事務所で話し合ったとき、三野弁護士が「今時の修習生で、宿も決めずに人権大会に行くような奴は面白いから、入れたらどうだ」と言ってくれたそうだ。
 何かするとき、準備を整えてから臨む方が良いのは当然だ。でも、面白そうなことがあったら、準備ができているか否かは気にせずに飛び込んでみた方が良いことも、確かにある。