メディア掲載情報

働く人の法律相談『内々定、取り消しは違法?』

一方的なら信義則違反、企業に損害賠償責任も

朝日新聞記事イラスト:今井ヨージ 学生の就職難が深刻です。
不況が長引くなか、採用数を減らす企業が多いのでしょう。昨年は不透明な経営環境を理由に、進めていた採用活動を途中で打ち切る事例もありました。しかし、打ち切り自体は、原則として違法ではありません。
 企業には、憲法で保障された「営業の自由」の一環として、「採用の自由」が認められています。何人採用するかはもちろん、採用するかしないかも企業の裁量次第。ですから募集を途中で打ち切ることも、社会的には由々しきことかもしれませんが、法的な問題はないのです。
 しかし、内定の取り消しは別です。法律用語では、人材を募集することを「申し込みの誘引」、応募することを「申し込み」といいます。企業は内定を出すことで、この申し込みを「承諾」した、つまり、学生と労働契約を結んだことになります。
 内定取り消しとは、この契約を破棄する「解雇」にあたります。学校の取得単位が足りず、卒業できなくなったという事情なら仕方がありませんが、企業の都合で取り消すのは整理解雇になりますから、解雇要件を満たしているかを厳しく問われます。
 「人員削減の必要性があるのか」「解雇を回避する努力を尽くしたか」などの点で合理性があり、社会通念上もやむを得ないと認められなければ、解雇は許されません。
 日本経団連の倫理憲章によれば、正式内定日は10月1日以降とされています。このため、内定に先立って、内々定が出されることがあります。現在のところ、裁判所は、内々定は正式内定前であることから、労働契約が成立したとみることに否定的です。
 だからといって、内々定ならば、自由に取り消せるというわけではありません。学生は企業の言葉を信じ、内々定までこぎ着ければ、契約成立は確実と信じているでしょう。説明を尽くし、誤解を正すことなく一方的に取り消すのは、いくら経営上の理由があるにせよ、信義則に反します。企業には一定の損害賠償責任が生じるでしょう。
 多くの学生が志望先の内定をつかみ、良き社会人の一歩を踏み出せるよう、お祈りしています。

朝日新聞 2011年02月28日