コラム

ともに働く

弁護士 向川 純平

障害の有無にかかわらず、憲法・法律・各種条約により働く人の権利は保障される。公正かつ良好な労働条件により、差別を受けずにインクルーシブな環境で働く権利を有する。
現実には、障害のある人の雇用確保は自由競争市場において十分でない。そこで、障害者雇用促進法は、行政機関や事業主に対して障害ある人の雇用義務を定め、労働者の総数の一定割合(法定雇用率)まで、要件を満たす障害ある人を雇用しなければならない。障害ある人に、まずは職場に入ってもらい、包摂的な職場環境を作っていこうとするところにこの制度の妙味がある。
しかし、昨年8月、行政機関における雇用率の大規模な水増しが発覚した。国の行政機関における障害ある職員の実雇用率は2.49%から1.19%と半減するほど大規模なものであった。異動したり亡くなったりした職員を雇用率の対象に参入するというお粗末さであった。障害ある人と「ともに働く」ことに対する意識の欠如から、数合わせに走ったことが原因である。
障害者雇用促進法は今年の通常国会で改正され、再発防止の仕組みが講じられ、政府は障害ある人を改めて採用した。しかし、雇用義務制度は入り口の制度にすぎない。職場における社会的障壁を除去し、「ともに働く」という環境づくりが最も重要である。公務労働における障害ある人の雇用に今後も注目したい。