働く人の法律相談『出張経費いつまで請求できる?』
立て替え分は、5年間まで可能
ビジネスパーソンに出張はつきものです。移動や宿泊等の経費は、労働者がいったん支払い、後で清算する方式が主流ですが、定額の日当に雑費が含まれる場合などは、労働者が持ち出しを強いられるケースもあるようです。今回は、出張経費の負担のあり方について考えてみます。
出張に要した費用をどう負担すべきか、はっきり法律に書いてあるわけではありません。労働契約や就業規則に定めがあればそれに従いますが、明確な定めがない場合は「労務の提供にあたり必要な経費を労働者が立て替え払いする」という黙示の契約が、その都度成立していると考えることができそうです。
立て替え払いなので原則は会社が後で全額負担すべきです。仕事のための必要経費なのかが「常識」で判断されます。例えば出張先での食費。出張でなくても食事は取るので労働者負担と考えるのが当然です。一方、宿泊費や交通費は出張でない限りかからないので会社負担です。ただ、例えば1泊何万円もする高級ホテルの宿泊代まで会社が負担する義務はないでしょう。
出張に日当が出る会社がありますが、日当には、労働時間のあいまいさを補う側面があります。出張時は場所が拘束され、労働者としては移動も含めた全時間が労働時間であると考えたいところですが、そうは解釈されていません。そこで、時間外労働として明確に算定しにくい分を、日当で補っているわけです。
定額の日当に、近距離交通費など必要経費を含めると決めている会社もありますが、これには注意が必要です。仮に日当が2千円で、必要経費が3千円だった場合、黙っていれば労働者は持ち出しになってしまいます。差額の千円は、会社の規定にかかわらず請求できると考えられます。
経費の精算について、出張から戻ってから「1週間以内」や「3ヶ月以内」などの機嫌を設けている例があります。しかし、期限を過ぎても、立て替え払いした債権は会社なら商法上の時効(5年)までは消滅せず、請求可能です。例外は、規定があって初めて発生する食費補助などの恩恵的な権利。これらは会社の期限で消えてしまっても仕方がないと考えましょう。