コラム

新磯会の金バッヂ

弁護士 小島 周一

 中学1年の頃、母の弟、しゅうぼうじいちゃんが作った磯釣り同好会「新磯会」に入れてもらった。新磯会には母の妹の澄子おばさんや夫の薫おじさんも入っていて、月に1回程、伊豆や外房、時には三宅島などに釣りに行った。当時は週休1日、社会人の会なので、土曜日の夜10時頃に車で集まり、真夜中の国道を走って午前3時頃、釣り宿に着く。ちょっと仮眠を取ってから、日の出前に小さな渡船で釣り場に渡って、お昼前まで釣りをする。迎えの渡船で釣り宿に戻り、カレーライスなどの昼食をとって、車でまた川崎に戻るのだ。
 磯釣りの会なので、メジナ、ブダイ、黒鯛、時にイシダイやイシガキダイなどを狙う。例えばメジナ狙いのときは、ミンチした鰯を入れた一斗缶を釣り場まで持っていく。中学生の私も一会員として同じ仕事を担わされ、それが一人前扱いされているようで嬉しかった。
新磯会はイシダイの形のオリジナルバッヂを作っていて、釣行の毎に、金、銀、銅、赤等のバッヂを渡す。優勝はもちろん金だ。大抵は一番大きな魚を釣った人が優勝だが、ウミタナゴなどは数で優勝者が決まった。
 バッヂは釣り用帽子の大きなつばにつける。自分の帽子に金バッヂを着けるのが夢だった。つばにだんだんバッヂが増えて、中2の頃、ついに金バッヂを着けた頃には、バッヂの重みで帽子がすぐに前に傾いてしまった。
 大人と同じ役割や責任分担、対等の競争、そして喫茶店で飲む珈琲や時々耳にする「大人の会話」。新磯会は中学生の私に大人への階段を少し登らせてくれた。

【2021年事務所ニュース新春号】