コラム

高校で授業した日のこと

弁護士 太田 伊早子

 先日、高校で授業をする機会に恵まれた。職業柄、様々な講演をする機会があるのだが、高校に行って話すということは実はめったにない。せっかくなので、気がついたことをご紹介?しようと思う。
 第一に、高校生の朝は早い。1時間目の開始が午前9時。そのため、集合時間は午前8時台。普段は、早くても午前10時の裁判に間に合うように行動するのが通常なので、寝坊しないかハラハラした。すっかり早起きについては堕落したことを痛感した。
 第二に、驚くほど校舎内の様子に違和感がない。今回行った高校は、私が通った高校ではないし、私が高校生だったのは四半世紀くらい前のことだけれど。学校というものは時空を超えるところなのかもしれないと感じた。
 第三に、矛盾するかもしれないけれど、「ああもう自分は大人になったのだ」と深く感じた。生徒が大人である私に多少緊張しているようであること、指名された時のとまどった様子、そして、質問に対して真剣に考えをまとめている姿などをみてしみじみ思った。
 一人の大人として、私は、心のなかで、すべての生徒の人生が、自分の存在を肯定し、自分らしく生きられる人生になることを願いつつ、「みなさんは、どういう社会を求めますか」と問いかけて、その日の授業を終えた。

【2021年事務所ニュース夏号】