コラム

裁判員裁判という「新しい経験」 

弁護士 辛  鐘建(しん ちょんごん)

 GW前に、弊所の太田弁護士の誘いで裁判員裁判に携わった。司法修習生時代や弁護士1年目の時には「弁護士たるもの刑事事件!裁判員裁判は絶対したい!」と思っていたが、日頃の業務に追われたり、まとまった期間が取られてしまうというネガティブ要素から知らぬ間に敬遠していた。また、社会人4年目に入り多くの仕事をこなす中で、どこか新しいことに関わる積極性が低減してきているなという実感もあった。
 当の裁判員裁判では、事件自体には争いはなかったが、共犯者を敵性証人として重要な反対尋問をする必要があり、太田弁護士が担当した。そこで、私は、弁護士としての先輩の凄みを見せられた。
 反対尋問は、事前に準備している尋問原稿に沿って質問をしながらも、敵性証人から引き出したい供述を適切に引き出しながら矛盾点を裁判員に気づかせ考えさせる、とても迫力のある法廷だった。そして事実認定としても、こちらが求めていたものだった。
 判決結果自体は想定通りではあったのだが、裁判官、検察官、弁護人で行う反省会で明らかにされた裁判員アンケ-トでは、「弁護人の説明がすごく分かりやすかった」という評価が多数を占め(検察官の説明は今ひとつだったとの評価が多かっ)た。
 裁判員裁判という新しい経験をし、自分以外の弁護士の仕事を見ることで、自分の足りていないところに陽を当て、事件や仕事への取り組み方の引き出しを増やすことができた。失敗や苦労を惜しまず、どんどん新しい経験を増やしていきたい。

【2021年事務所ニュース夏号】