コラム

2022年事務所ニュース新春号

巻頭言
 二〇二一年の皇居新年一般参賀は感染症拡大のため中止となり、宮内庁はビデオメッセージを公開した。この中で、天皇は「皆さん」と呼びかけ、皇后は「皆様」と呼びかけた。いずれも、語りかける対象を、「我国民」や「我が国の皆さん」に限定することを,意識的に避けている。
 この背景には、出身国や国籍国からの帰国要請があっても断り、厳しい出入国規制があってもなお、日本列島に踏みとどまった三〇〇万人弱の外国籍住民の存在がある。
 ところが、約三〇万人の特別永住者と約八〇万人の一般永住者以外、つまり全体の約三分の二の人々は、一定の期限を定められ、しかも活動の範囲を制約されて在留している。例えば、日本人と結婚していても一年ごととか三年ごとに更新をしなくてはならずその境目の時期に夫婦関係が悪化していれば、必要書類を提出できないために期間更新ができなくなってしまう。会社から契約を打ち切られれば、働くことを目的とする在留資格を失う。経営が悪化して入管が定める基準の利益を上げられなければ、期間は更新できない。留学生が学費を滞納したり出席日数が不足したりすれば、理由の如何を問わず一〇〇%学生の立場を失い、在留資格もなくなる。技能実習生の場合は、転職したり、寮から出たりすると、逃亡扱いされて更新許可申請をしてもらえないこともある。技能実習生の妊娠と出産を禁止する送り出し団体もあり、雇用主に隠した出産の事故すらある。
 合法在留から「不法残留」に転落する危険は、常に、存在する。
 そして、いったん「不法残留」という立場になれば、「全件収容主義」と称する入国管理局の定める規則に従い、収容所に拘束される。殺人や窃盗などの犯罪を犯した場合は、裁判所の厳格な審理を経て有罪と認定され、しかも期限を定めて(「無期刑」も無期という定めに従う)刑務所に収容されるが、入管の収容には裁判所の関与はなく、しかも期限の定めはない。難民であるから保護して欲しいと求める人の場合であっても、同じ扱いである。日本で生まれて日本の公立の学校を卒業していても、日本人と家族になっていても、事情は異ならない。申請による一般的な救済制度は存在しない。例外は、唯一、法務大臣の裁決による個別的な在留特別許可だけである。
 国籍を問わず、人間を人間として尊重する方針に転換しなくてはならない。

【2022年事務所ニュース新春号】