コラム

第3回『八百屋お七』

 縁あって、日本舞踊のお稽古をするようになりました。

 お師匠さんの勧めに従い、今年5月にはおさらい会に出ることになり、演目も決めていただきました。

 この踊りのもととなっている八百屋お七は、火事に遭って逃げたお寺であった吉三に一目惚れし、もう一度会いたいと念じるものの機会がなく、火事になればまた会えるかもしれないと思い違いをしてしまいます。本当にその通りのことをすれば、現住建造物放火既遂罪に該当してしまいますし、果たして責任能力が否定されるかどうか、疑問です。しかし、ストーカーではありません。

 大阪では、この話に近いところが人形浄瑠璃で語られてはやり、更に常磐津で、歌舞伎俳優が人形振りで踊って大流行しました。しかし、江戸、東京では、火事は本当の御法度だったためか、清元で、しかも火を放つのではなく、木戸を閉めて往来できないのに櫓に登って太鼓を叩いて木戸を開けようとした形式犯にして上映されました。この演目を、「幻お七」といいます。

 お七は、羽子板に写した面影だけで片想いし、やがて羽子板から吉三が抜け出してともに舞いますが幻として消えてしまったときに泣きじゃくります。

 数え17才のお七に今の私が扮するのは、バケモノといわれてしまうかもしれませんが、精進するつもりです。