技能実習制度を廃止する 【2022年事務所ニュース夏号】
弁護士 三木 恵美子
どうしてあれほど技能実習生が酷い目に遭っているのか。
根本的な問題は、技能実習生が労働者であると認められていないことにある。すなわち、技能実習生は日本で研修を受けてそこで得られた技術を帰国して本国に移転し国際貢献するという建前に問題がある。労働者性が認められないと、労災保険も労働基準法の適用も、最低賃金の保証も受けられない。これを変えるために、2010年以来、一つ一つの論点について突破する判決が積み上がっているのが現状である。
さらに、実習の建前があるために、実習先を変更するすなわち転職の自由がない。その職場を離れたら一律に在留資格がなくなり日本にいられない立場にあることが、どんな残虐な目に遭っても我慢する結果となっている。
加えて、民間の営利企業たる監理団体が個別の企業を監督する制度になっているが、監理団体からすれば企業は監理費1人2万5千円/月を支払ってくれる顧客であるから、それに対して強い指導を行うことは期待できない。
このような制度設計になっているがために、個別企業の雇用主は、どのような働かせ方をしてもかまわないのだという誤解曲解をしてしまう。そして、その雇用主の誤解が、同じ職場で働く日本人労働者が実習生を同等な労働者と見なさず、いじめや暴力をふるう事態を引き起こす結果を招いている。
報道されている弊害は、個々の事業主や従業員の個人の問題では決してなく、制度設計が間違っているがために逸脱行動を惹起しているのである。
技能実習制度は廃止するべきである。
必要な労働者は、別表1の労働者と同等に業種別の働くための在留資格を増設して迎え入れれば良い。