コラム

クリティカルマスの実感   【2023年事務所ニュース 夏号】

弁護士 芳野 直子

 
 子どもの頃好きだったアニメを思い出すと、主要キャラクターの内、女性はいつも一人でした。ガッチャマンは5人の内1人、サイボーグ009は9人中1人、宇宙戦艦ヤマトは乗組員数百人のなかで1人。世界にはびこる悪と闘うにしても、地球を滅亡から救うにしても、女性は紅一点分の役割しか与えられてこなかったのでした。あれからン十年、最近のアニメは多くの女性キャラクターが活躍していて、女の子も感情移入しやすく、良い時代になったものです。

 しかし、現実の世界は、非正規雇用の約7割は女性で、経済的にも社会的にも弱い立場におかれている人も多く、男性と女性の階層化が弊害となっています。世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数2022」によると世界各国の男女間の平等について調べた調査で、なんと日本は146カ国中116位なのだそうです。

 2022年度、私は日弁連の副会長を務めさせていただきました。この年の15人の日弁連副会長の内女性が6人!至上初めて4割に達しました。6人の女性副会長は性格も出身地も経歴もバラバラで、発言も個性に富んでいました。組織の中でマイノリティが3割を超えるとその属性の多様性が一気に広がり、属性代表のような縛りが無くなるらしく、これを「クリティカルマス」というそうです。実際、多様な女性陣の一人としての副会長職はとても自然に務められ、こんな時に副会長ができた幸運に感謝しました。

 男だから、女だからではなく、自分として自然体でいられるためには、集団内の性別の割合に極端な偏りがあっては実現できません。男も女も共に担い合って、ジェンダーに縛られず、自由に生きられる時代が来て欲しいものです。