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最近の消費者被害

 消費者問題に長く取り組んでくると、その時代その時代の被害が浮き出して見えます。現在は、①不況、②高齢化社会、③ネット社会が、消費者被害の温床となっているようにも見えてきます。最近の事例をご紹介しましょう。

 長引く不況の中で、貯金を減らしたくない、少しでもいいから増やしたいというところに様々な投資話が持ち込まれ、被害相談が後を絶ちません。金融規制緩和により、以前にはなかった複雑なデリバティブを組み込んだ金融商品が次々と発売されています。そして、それらの販売が証券会社だけではなく、銀行など以前には投資商品を扱わなかった金融機関も取り扱うようになりました。リーマンショックでもわかるように、デリバティブなどの難しい商品は、プロでも見極められないほどの非常にハイリスクであることが多く、そのような商品性を十分把握しないままに、勧誘に乗って購入してしまうと、大変な損失を抱え込むことになります。ことに為替によるリスクヘッジの必要もない中小企業が銀行からの勧誘によって為替を組み込んだ金融商品を購入しまったことが、近年の異常な円高により多くの被害を生じています。本来投資は、その投資家の属性等に適合した商品で行うべきであり、さらには、しっかりとした説明を受けた上で、その商品性も含めたリスクを十分理解しなければ購入するべきではありません。投資は慎重にそして、わからないものには手を出さないが原則です。

 さらにはもっと危険なことに、振り込め詐欺が、「投資」の衣を着てお年寄りをねらっています。これは、登記だけがあるが実際には実働していない形だけの会社を、あたかも将来性のある優良企業のように説明し、株や社債が値上がり確実なように告げて、高額で「未公開株」や「社債」を買わせるというものです。いざ購入するとあとは勧誘してきた証券会社と称する会社とも、優良企業だったはずの当該会社とも連絡すら取れなくなり、だまされたことに気づくというものです。これはもはや「投資」ではありません。いわば、新しい形の振り込め詐欺の一類型ですが、投資という形を取るために支払う金額も高額で被害が深刻になります。訪問販売や電話勧誘販売でなされる「うまいもうけ話」にだまされないように十分注意が必要です。

 若い世代をねらった被害として、出会い系サイトを使った詐欺的被害も後を絶ちません。異性との出会いをコーディネートするかのような形を取りながら、実際には出会えないにもかかわらず、電子マネーやクレジットカードで次々とお金を支払わせ、結果として多額のお金を払い込んでいるというものです。この被害は、事業で資金繰りに困っている人に、融資を持ちかけたり、宝くじに当たったというような話を持ち込んで、その前にお金を支払わせるという形での進化(?)系の被害もあり、携帯電話などのネット世代を直撃しています。ネット世代は、顔を見ないネット取引やクレジットなど現金を介さない取引へのハードルが低いため、気軽に勧誘に乗ってしまい、気がつくと膨大な請求がカード会社からきて呆然とするのです。

 消費者は、社会の変遷の中で、様々な危険に取り囲まれています。まずは被害に遭わないために、うまい話には落とし穴があるかもしれないことをふまえて十分注意することが必要です。しかし、不幸にも被害に遭ってしまったと気づいた場合には、あきらめずに、まずは専門家に相談しましょう。被害が救済される道があるかもしれません。弁護士への法律相談はもちろんのことですが、各市町村にある消費生活センターを活用するのも被害の早期発見、早期解決の糸口となるものです。