コラム

第18回『神奈川生存権裁判』

 憲法25条は1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定めています。これを受けて、生活保護法は1条で「生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障する」と定め、同法8条2項では、保護の基準は「要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえないものでなければならない」と定めています。

 つまり、いったん決められた保護基準というものは、もともと憲法25条及び生活保護法8条2項によって健康で文化的な生活を送るための最低限度の給付として定められているもので、なにも贅沢をしているわけではありません。ところが、リーマンショックなど経済的な要因や少子高齢化などで生活保護を受給する人が増えて社会保障費が増加してくるととたんに国は受給者がみな不正受給をしているかのようにバッシングを始め、生活保護費の切り下げをしてきました。ただでさえ肩身の狭い思いをしている受給者に対する国をあげてのイジメです。本来、福祉国家にあって社会保障制度は常に前進・進歩していくべきものであって、いったん設定して国民に保障した制度が後退していくことはあってはならないものなのです。まして、生存権にかかわる生活保護基準について、景気が悪いから切り下げるなどということが許されてはなりません。

 すでに全国で生活保護費の切り下げに対して、取消訴訟や国家賠償訴訟が起こされていますが、いよいよ神奈川でも、48名の原告が立ち上がり、厚生労働大臣が保護基準を切り下げたことが憲法25条・生活保護法8条などに違反しているとして取り消すよう国に請求するとともに、そのような切り下げは裁量権の濫用・逸脱であるとして大臣の違法行為につき国に対して損害賠償を求める裁判を昨年9月24日に横浜地方裁判所に申し立てました。そして、この1月18日が第1回期日です。事務所からは私、太田弁護士、向川弁護士が弁護団に参加しています。