コラム

第21回『労働に関する事件の紹介』

解雇・雇止め事件

労働者が馘(解雇)になる事件は跡を絶たず,相変わらずリストラは猛威を振るっていますが,解雇されても諦めてはいけません。合理的な理由のない解雇は,労働契約法で無効とされるので,依然として使用者と労働契約関係が存続していることの確認を求めたり,解雇以降の賃金を請求することができます。
また,期間の定めがある労働契約(パート・アルバイトなどに多い)で働く人が雇止め(労働契約期間が満了したときに契約を更新しないこと)されても諦めてはいけません。雇止めされるまでの間に何回も契約を更新してきた場合や,会社が契約の更新を期待させるような言動をしていた場合には,解雇の場合と同様に,労働契約法により,合理的な理由なく雇止めをすることはできないのです。
解雇や雇止めの効力を争う場合の解決手段としては,使用者との交渉や裁判,労働審判などがあります。

未払賃金請求事件

景気回復が報道される中にあっても,なお給料(賃金)や退職金を払ってもらえないケースが相次いでいます。
また,「仕事があるだけでもありがたく思え」と言わんばかりに会社が残業をさせておきながら残業手当を支払わないケース(サービス残業)も依然として多くあります。
しかし,会社と労働者の関係も,労働契約という一つの契約です。働いた分はきっちりと賃金を支払ってもらいましょう。
このような未払賃金,退職金や残業代の支払いを求める場合の解決手段としては,使用者との交渉や裁判,労働審判などがあります。
また,賃金などの未払額を裏付ける証拠がある程度確かなものである場合,交渉や裁判を経ることなく,いきなり会社の財産を差押えたりもしています(先取特権に基づく差押え)。

労働災害

労働者が,仕事が原因で怪我をしたり病気になった場合,これを労働災害(労災)と呼んでいます。いわゆる職業病だけでなく,今や海外にまで知れ渡った過労死も,労災なのです。
また,仕事が原因でメンタルヘルスに不調を来す方が多くおられますが,パワハラ・セクハラがあったり,長時間労働を余儀なくされていたり,担当業務に大きな変化があったりといったストレス要因次第で,労災と認定される場合があります。
労働者が労災に遭った場合,労働基準監督署(労基署)に対し,労災保険の支給を求めることができます。仮に使用者が労災保険料を払っていなくてもです。
また,労災に遭った労働者は,使用者に過失がある場合には,使用者に対して損害賠償請求をすることもできます。
横浜法律事務所は,労災に遭った労働者の依頼を受けて,労基署に対して労災保険の給付を請求したり,労基署が労災と認定しなかった処分の取り消しを求める裁判をおこなったり,使用者に対して損害賠償請求を行ったりしています。

不当労働行為救済申立事件

労働者が労働条件に不満を持っても,一人で会社相手に労働条件の向上を求めて交渉することは困難を伴います。そのため,憲法上,労働者は,労働組合を結成して,会社と団体交渉をしたり,ストライキをすることが権利として保障されています。最近では,一人でも加入できる労働組合も増えました。
ところが,会社が,労働組合への加入や労働組合の活動をしたことを理由に労働者を不利益に取り扱ったり(例えば解雇や配転など),所属する労働組合の別により差別を行ったり(賃金差別や昇進・昇格差別など)することも少なくありません。
しかし,これらは不当労働行為として労働組合法で禁じられており,このような不当労働行為が行われた場合,労働者や労働組合は,労働委員会に救済を求めることができます。
横浜法律事務所は,労働組合の依頼を受けて,労働委員会に対する不当労働行為救済申立も行っています。

その他の労働事件

その他にも,不当な人事異動の効力を争ったり,会社が労働者に対して不当な損害賠償請求を行ってきたことに対する対応をする等,様々な労働事件を取り扱っています。

労働審判手続について

労働審判手続は,裁判所で行う手続ですが,裁判官(審判官といいます。)1名の他に,労働組合から推薦された者1名と経営者団体から推薦された者1名の計3名で審判委員会を構成し,この審判委員会が審理を行い,3回以内の期日で,解決を目指します。話し合いによる解決(調停)を試み,それが無理な場合には,審判委員会が,審判を下します。この審判は,当事者のいずれかが異議を申し立てれば,通常の訴訟に自動的に移行しますが,異議が出なかった場合には,判決と同様の効力をもちます。労働審判事件の約7割は,労働審判手続内で解決しています。