コラム

「私の願い」を「みんなの思い」に

─全国B型肝炎訴訟原告団の取り組み─

 

自らの権利が侵害された時、誰もがその回復を求めて立ち上がれるわけではない。国など、相手が強大であるときはなおのことだ。

さらにさらに、自らの権利回復だけでなく、同じような立場に置かれている他の被害者のために、大切な自分の人生の、貴重な時間とエネルギーを割けるかというと…。考えただけでも大変なことだ。

全国B型肝炎訴訟原告団は、そんな人たちの集まりだ。

 

1948(昭和23)年7月1日「予防接種法」施行。予防接種を受けることは国民の義務とされ、小学校、公民館などで集団予防接種が始まった。しかし、予防接種の現場では、注射筒、注射針の使い回しが蔓延し、国は、その危険性を認識していたにもかかわらず、コスト削減と医師の手間の省力化を優先して使い回しを容認していた。

これにより、沢山の人がB型肝炎ウイルスに感染し、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなどの被害を蒙ったり、いつ症状が悪化したり肝がんが発生するかわからない恐怖と一生付き合わなければならなくなってしまった。

 

1989(平成元)年、札幌の5名の被害者が国を被告とする裁判に立ち上がり、17年にも及ぶ長く苦しい裁判闘争を経て、2006(平成18)年6月16日、国の責任を明白に認めた最高裁判決を勝ち取った。それにもかかわらず、この5名以外の救済に取り組もうとしなかった国に対して、全国の被害者の方々が、全国B型肝炎訴訟原告団を結成し、全国B型肝炎訴訟弁護団とともに、集団提訴を行い、それらの訴訟・運動によって、2011(平成23)年、ようやく国は、原告団、弁護団と「基本合意」を結んだ。こうして、集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染した全国の被害者が救済される道筋が作られたのだ。

その後も、原告団は、「全てのウイルス性肝炎患者が暮らしやすい社会の実現」を目指して、恒久対策、真相究明・再発防止、教育啓発の3つを柱に取り組みを続けている。また、患者の方々に正しい知識を伝え、ひとりぼっちの患者をなくそうと、医療講演会・患者交流会などの取り組みを全国各地で行っている。それらの成果を踏まえ、年に1度の厚労大臣協議で、厚生労働大臣に、肝炎患者の思いと要望を直接伝え、医療助成制度の拡充を図っている。

 

全国B型肝炎訴訟弁護団は、B型肝炎訴訟に携わるだけでなく、原告団と共に、これらの活動を行っている弁護団だ。全国B型肝炎訴訟神奈川弁護団に加入している当事務所の所員も、B型肝炎訴訟の手続だけでなく、神奈川原告団の方々とともに、これらの活動にも取り組んでいる(集団予防接種によるB型肝炎訴訟の相談は、全国B型肝炎訴訟神奈川弁護団  ☎045-264-8740まで)。