コラム

志を引き継いで

1963年(昭和38年)に、横浜法律事務所は産声を上げました。当時は、紹介者のいない人は相談すら受け付けないという弁護士が多く、まだまだ市民にとって弁護士は遠い遠い存在でした。司法の手が届かず泣いている人たちが多くいるこの現実に挑戦し、弁護士に接点のない人も気軽に相談できる場所をつくり、この神奈川の地で地道に生きて頑張っている市民や労働者と共に闘っていこうという志をもってこの事務所が立ち上がったのです。事務所を作ったのは、弁護士になってまだ二年目の横山國男と三年目の陶山圭之輔、三野研太郎の三人の若手弁護士でした。不安や迷いもあったでしょうがそれを上回る新しい試みに三人の若者はキラキラ輝いていたことでしょう。丁度、日本は、翌年に東京オリンピックをひかえ、敗戦を乗り越えてこれから新しい時代を築き上げていこうという気持ちにあふれていました。
それから時は流れ、来年再び東京にオリンピックがやってきます。しかし我々は、グローバル化に伴う貧富の格差、狭量なナショナリズムの台頭、超高齢社会の訪れとこれまで経験したことのない混沌の中にいます。このような時代の荒波の中で、地道に生きる「市民・労働者とともに」という創立当初の理念は、今も横浜法律事務所の心に根付いて私たちに弁護士としての道を示し続けています。
2019年(平成31年)1月21日、事務所の創設者であった横山國男弁護士が、この世から旅立っていかれました。享年91歳。穏やかで寡黙な横山弁護士らしい静かな大往生でした。
今を生きる私たちは、彼らの創設の志を想い、しっかり引き継いでいく決意を新たにして、未来に向かって進んでまいります。