コラム

老後資金不足問題

弁護士 佐藤 正知

6月3日、金融庁の審議会ワーキンググループによる、年金だけでは老後資金が不足することを当然の前提として、預金から投資へ促そうとする内容の報告書が公表された。これが、老後資金年金だけでは2000万円不足として物議を醸した。
2004年の年金制度改革は、年金積立金(年金保険料のうち年金給付に使用せず積立てた部分)を破綻させないために、将来の年金給付を削減したものであった。それにもかかわらず、政府は、100年安心と謳って年金だけで十分生活できるから安心と国民を誤信させて、制度改革を断行したのである。
つまり、当時から国は、年金制度、財源としての積立金は維持するが、年金給付で不足する部分は自己責任、という方針であった。
金融資産の中央値は、2人以上の世帯で400万円、単身世帯で50万円、金融資産を保有しない世帯は30%を超える。老後資金のために投資する余裕などない! 2000万も蓄えられるか! という反応になるのは当然であった。でも、お坊ちゃまの総理や財務大臣にはこの感覚が実感まではできないのだろう。
少子化で簡単には保険料収入増を見込めない以上、国庫負担を増やすべきではないか、気前よく戦闘機やイージスアショアを購入する防衛費等との優先度判断は適切なのか、といった議論を踏まえて投票しようと思う。