コラム

フィリピンにおける超法規的殺人

弁護士 井上  啓

日本国際法律家協会の活動で3月14日から18日まで、フィリピンのマニラに行き、ドゥテルテ大統領のもとで麻薬犯だけでなく、市民・農民の活動家、労働組合員、さらには弁護士までも「超法規的」に殺害されている現状を調査する国際弁護団に参加した。本来、麻薬犯罪は刑事事件として捜査立件し、裁判で有罪になってから刑の執行になるのに、「麻薬戦争」、敵か味方か、敵を弁護する者も敵である、との認識から刑事手続きをせず、警察と(戦争だとして)軍隊が一緒になって、敵のレッテルを貼られた者を殺害している。日本では、5月11日から18日まで、フィリピンから農民リーダーのロサンデ氏を招いて、大阪・横須賀・東京で「超法規的殺人」について講演会を開催した。同月14日には、私が非常勤講師をしている明星大学でもロサンデ氏に特別授業をしてもらった。横須賀の講演会は5月23日付神奈川新聞で大きく取り上げられ、5月30日には同協会として、来日したドゥテルテ大統領に宛てて抗議の手紙を出した。日系スミフル・バナナや日本の経済援助も「超法規的殺人」と無関係でなく、日本国内でも問題提起してきたい。