コラム

国籍を問い直す

弁護士 三木 恵美子

 2019年、テニスの大坂なおみ選手に対して二つ持つ国籍のうち一つを捨てるように迫る報道がされた。しかし、そもそも、1985年に父母両系血統主義、すなわち父か母のいずれかが日本国籍を持っていたらその子どもは日本国籍を持つと国籍法を改正した時点で、多数の二重国籍者が出ることは織り込み済みである。さらに、成人した後選択をするという制度を造ったものの、選択の届出をする人はほとんどいないのが実情である。なのに、なぜこのタイミングで強制するのか。
また、横綱白鵬関は、昨年帰化をした。引退後親方になるためには日本国籍を必要とするという制度のため、やむを得なかったと聞いている。しかし、白鵬関は他に例を見ないほど長期にわたって大相撲を支えてきた方なのだから、実績から見れば親方になって後進指導に当たるのが当然であろう。親方の要件として国籍にこだわることに、いったい何の意味があるのか問い直すべきである。
これに対して、ラグビーのワールドカップの場合は、一定期間の居住要件を満たしさえすれば国籍にかかわらずナショナルチームの代表になれるというルールがある。日本代表もその通りに構成され、チームとしての一体感を鮮明に示す立派な試合を展開した。国籍が一緒かどうかで一体感が形成される訳ではないのは、出場した各チームを見ても明らかである。
国を代表して出場するからとか、国技だからとか、なんとなく分かったような気になって、国籍を要件にし続けていて良いのか、問い直したい。