コラム

わんこといっしょ

弁護士 芳野 直子

 小学校の頃、家の近所の原っぱに、真っ白で体の大きな紀州犬がいつも散歩に来ていた。決まった時間にひとりやってきて、そこで昼寝して、夕方になるとどこかに帰って行った。首輪もしていたし、毛並みも良かったのでどこかの飼い犬だったのだろう。小学校から戻ってくると、なでたり、またがったり随分遊んでもらったが、わんこは嫌がりもせずおとなしくされるがままに相手をしてくれた。大型犬がリードもつけずにうろうろするなど今では考えられないが、犬も人間ものどかな時代だった。
大人になって念願叶って自分の家にわんこを迎えることができた。体重2キロほどの小型犬で、絹のような柔らかな毛がふわふわと暖かかった。仕事から帰ってくると、わんこは大喜びで迎えてくれて、私はなでながら今日の出来事を報告したり、悩み事を相談(?)したり、休みの日は、散歩をしたり、旅行をしたり、いつも一緒だった。
弁護士の仕事は人の人生に関わることも多く責任も重く、精神的に辛い時も少なくない。しかしそんな時、わんこはおおらかに私の屈託や邪気を払ってくれ、癒やしを与えてくれた。15年と7カ月の間そんな共同生活を続けていたが、昨年6月にわんこは虹の橋を渡っていってしまった。
犬と人間のつきあいの歴史は一万数千年とも5万年とも言われている。そんな歴史の中では一瞬であったが、自分もわんことのすばらしい時間を持てたことがとても嬉しく、大切な思い出である。わんこから得た良い記憶を糧に、これからも頑張っていきたい。