コラム

裁判は不要不急か

弁護士 三木 恵美子

 2月下旬末からパタゴニアにトレッキングに行って3月に帰ってきたら、マスクがないトイレットペーパーがないという事態になっていた。そして、3月末にオリンピックの延期が決定されたら、途端に、緊急事態宣言が発せられた。仕事に行くな、学校に行くな、自宅に引きこもれ、という自由の制限が、いとも易々と命じられた。それに異を唱えようとすれば命を大切にしないのかと非難され、抗った行動をとれば人殺し呼ばわりされかねない雰囲気が世の中を支配した。
 最高裁判所は宣言直後に事実上の閉鎖を決め、それぞれの裁判体の判断だという建前を述べたものの、実際は殆ど全ての訴訟や調停の期日が、職権で取り消された。感染者ゼロを誇った岩手県の盛岡地裁ですら、取り消した。裁判や調停は、当事者の方の人生をかけて行われているから、不要不急の外出に該当するはずもないと、私は考えていた。通信機器を使うなどの工夫や努力が尽くされることもなく裁判所の機能を停止したことは、これから先、じわじわと様々な影響を与えるだろう。
 自分としては、せめて、今日できることは明日に延ばすことなく、一つ一つの相談や期日を大切に行っていきたいと思っている。