コラム

桜咲く30周年          

 弁護士  芳 野 直 子

 私が弁護士登録をしたのが1991年4月だったので、今年の桜が咲く頃に、私は弁護士人生満30年を迎える。通常は、30年を記念して同期の法曹で集まって賑やかにお祝いするのだが、コロナ禍の為中止になってしまったため、一人お祝いをするしかなさそうである。
 振り返るとこの30年必死に走り続けてきたが、寄る年波と目尻の笑いじわには勝てず半端なく息切れしてきていた感もある。しかも追い打ちを掛けるように、裁判のIT化が取りざたされてきた。根っからの文系の私は、そっと棚上げにできないかなと期待していたのだが、このコロナ禍で一気にリモートワークやらweb会議やら押し寄せてきて、否が応でも対応せざるを得なくなってしまった。とはいえ、実際にやってみると新しいコミュニケーション手段として興味深くもあり、反面恐ろしくもある。この調子でおっかなびっくり進み続けるしかなさそうである。
 ちなみに、神奈川県弁護士会では、登録して35年間弁護士を続けると表彰してもらえる。私がまだ駆け出しの頃、事務所の創設者であった横山國男先生が、この35周年表彰を受けた。そのときに、横山先生が「若い頃は、なんで弁護士を長年やっているだけで表彰されるんだと馬鹿らしくみていたものだけれど、この年になってみると、死にもせず、資格を失うことも無く、大過なく過ごしてきたと言うことそれ自体に価値があるように思うんだよ」と語っていたことを思い出す。私は、肉体年齢は実年齢なりだが、精神年齢はまだまだ若造なので、横山先生のような達観には至らないが、時々この言葉を思い出し細ーく長ーくこの仕事を極め続けていければと思っている。

【2021年事務所ニュース新春号】