コラム

鬼滅の刃  

  弁護士 佐藤 正知

 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編を見た。
 最初に立ちはだかる鬼、「魘夢(えんむ)」は、人間に夢を見せつつ、その間に精神の核を破壊する。労働者を精神疾患にする、夢を語るブラック企業のようだ。
 この「魘夢」は、劇場版につながる、前の物語では、鬼のトップ「鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)」からの「私は何も間違えない。全ての決定権は私にあり、私の言うことは絶対である。」という壮絶なパワハラで他の鬼が粛正される中で、「気に入った。順応できたならば、更なる強さを手に入れるだろう。そして私の役に立て。」と言われた唯一の生き残り?という、ブラック企業に順応してしまった中間管理職といったところだ。
 対して、煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)は、次に立ちはだかる鬼「猗窩座(あかざ)」から鬼になる勧誘を受けながらも、「君と俺とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうと鬼にはならない。」と言って鬼に立ち向かい、後輩の竈門炭治郎(かまどたんじろう)に「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと心を燃やせ。」と激励するのである。
 原作では平和な未来(現在)に繋がるのだが、現実にはブラック企業を支配する鬼がまだ跋扈しているからこそ、煉獄の言が刺さった。

【2021年事務所ニュース新春号】