コラム

入管法の改正が廃案に

弁護士 三木 恵美子

 2021年5月18日、入管法改正案が廃案となった。
 この法案の狙いは、3000~4000人の退去強制の対象者に対して、難民申請をしていても3回目以降は強制送還させる、送還を拒む者に新たに刑事罰を加える、加えて、仮放免の条件として監理者を必要とするというものである。
 しかし、これでは問題は解決しない。難民申請をしている者に対しては、現在の硬直した審査を改めて、相当な理由がある者は認定をする。加えて、日本で子どもを産み育てている者には、家族結合を実現する在留特別許可を与える。これだけで、かなりの人が在留資格を取得でき、収容と送還の対象者は激減するはずである。
 そして、そもそもの問題として、在留資格がないだけでその他に日本国の権益を害する恐れもない人を、司法審査も無く全県無期限収容できる体制を、抜本的に見直す必要がある。
 ともあれ、これまで数次にわたって繰り返されていた入管法の改悪が史上初めて阻止されたのは、外国人が自分自身を守るために抗うというレベルから、立場の違う人に思いを寄せ、我がこととして闘う市民が多数いるからである。共に生きるというスローガンが、スローガンから実感に変化している可能性を感じる。
 なお廃案時、250人いた被収容者は、6月末時点で30人まで減った。

【2021年事務所ニュース夏号】