神奈川県警警察職員の公務災害事件で逆転勝利認定を得ました! 【2022年事務所ニュース夏号】
弁護士 笠置 裕亮
私(笠置)と山岡遥平弁護士(神奈川総合法律事務所)とで担当していた神奈川県警警察職員の方の公務災害申請の審査請求手続で、本年3月30日付で逆転勝利裁決を得ました。
ご本人は、20代の最若手の職員だったのですが、不慣れな業務に苦しめられていたうえ、始業時の掃除なども担当させられ、業務指導もしてもらえない中で、長時間労働に苦しめられることになりました。そのため、2017年に入り、心身の調子を崩していくことになります。3月から4月にかけて130時間以上の長時間残業に従事しており、4月以降出勤できなくなりました。
当初はご本人だけで公務災害申請手続を行ったところ、発病時期を2017年1月とされ、労働時間も基準には足りないと見られてしまい、不支給決定を受けました。
審査請求段階から私たちが相談・受任をすることになりました。弁護団は、本件のポイントは①発病時期を2017年1月と見るべきなのか、もう少し後だと見るべきなのか、②労働時間の認定が過少にすぎないかの2点が重要だと見定めました。そこで、主治医に病状の経過を聴いたうえで発病時期を2017年4月頃だとする趣旨の医学意見書を作成していただいた上、弁護団の指導のもと、ご本人やご家族から、病状の経過に関する超詳細な陳述書を作成していただきました。
また、労働時間認定の仕方があまりにも過少であり、厳格に過ぎていたので、上乗せがされるべきであるとの主張をしました。
そうしたところ、支部審査会は、①発病時期は2017年1月のままであるが、②労働時間認定があまりに過小であったとして、2016年内の労働時間を上乗せで認め、100時間を超える月が複数あるという認定を行い、公務上決定(原決定取り消し)を行いました。
弁護団としては、そもそも①の発病時期の考え方がおかしく、それで勝てるのではないかと考えていましたが、②の労働時間認定のあり方を見直していただくことにより勝利することができ、本当によかったと安堵しています。
公務災害事件での逆転勝利認定は、民間と同様に極めて高いハードルがあり、逆転率は数パーセントしかないと言われているため、貴重な成果となったと自負しています。これで、私の逆転裁決事件は民間3件(いずれも2020年中)、公務1件の計4件となりましたが、やはり初動の段階で正確な方針を立てたうえで、諦めずに立証の努力を尽くすことが、逆転のためには必要だと改めて痛感しました。
私たちの事務所では、本件のように困難と思われる労災のご相談をお受けしておりますので、困ったことがありましたらぜひご相談ください。