アマゾン配達員について労災認定を獲得しました 【2024年事務所ニュース 新春号】
弁護士 有野 優太
1 アマゾン配達員の苛酷な労働環境と組合結成
皆様もご存じのアマゾン。消費者からすれば、自宅まで届けてくれる大変便利なサービスですが、その配達員の労働環境は苛酷なものです。
当事者は、アマゾンジャパンから配送を請け負う会社から委託を受け、神奈川県横須賀市で配送業務を行う配達員たちです。
2021年5月、アマゾンジャパンがAIによる配送指示を導入しました。これにより、配達員が頑張って配達すればするほど、AIの自動学習機能により、1日に配達する荷物の量が、加速度的に増えていきました。従前、1日120個ほどであったものが、次第に、200個を超えるようになり、配達員たちは、休憩も取れないほど労働密度が高まるとともに、月の時間外労働が100時間を超えるほどの長時間労働となっていきました。
しかしながら、配達員たちは、契約の形式上、個人事業主とされてしまっており、労働法が適用されないという扱いがなされ、時間外労働の規制もなされていなければ、割増賃金も一切支払われていません。
このような状態に抗議し、2022年6月、配達員たちは、「アマゾン配達員組合横須賀支部」を結成し、以降、アマゾンジャパン及び各配送会社に対し、労働法で定められている基準をしっかり守り、労働環境を良くするよう要求しています。
その組合活動の一環として、今回の労災申請があります。
私も、アマゾンの配達員の権利擁護のため活動する、「アマゾン労働者弁護団」の一員として、労災申請の代理人を務めました。
2 事故の概要
2022年9月9日夜8時ころ、配達員(Aさん)が、注文者宅のポストに荷物を投函しようとした際、階段(15段)のスロープ最上部で左足を滑らせ、これによって体のバランスを崩してしまい、階段から転落して腰椎圧迫骨折の大けがを負ってしまいました。これにより、入通院の治療費がかかるとともに、配達員は、3か月間、働くことができず、その間、収入が途絶えてしまいました。
3 労働者であると認めてもらうため、いざ労災申請
労働者であれば、労災保険が適用され、業務中怪我や病気になってしまった場合には、その治療費全額と休業中も賃金の8割相当額の給付(これを「休業補償給付」といいます。)を受けることができます。
しかしながら、配達員は、形式上、個人事業主とされてしまっているため、労災保険の受けるためには、労働基準監督署に、配達員は、配送会社から、指揮命令を受けて働く労働者であると認めてもらう必要があります。
Aさんは、弁護団と相談の上、意を決して、2022年11月、休業補償給付を求め労災申請しました。
4 実態から労働者と認定
契約の形式上、個人事業主とされているとしても、実態として、会社から指揮命令を受けているのであれば、労働者であると判断されることになります。
そのため、弁護団は、Aさんを含む、組合の皆さんと協力し、現場の労働実態を詳細に主張立証しました。
たとえば、アマゾンのアプリによって配送先、配達個数、配達順序、時間指定等が指示されるとともに、GPS信号や報告の義務付けによって業務の遂行状況を管理していること、配達員はいくら個数が多くなっても、荷物を拒否することはできないこと、いくら荷物を運んでも報酬は日当制であり固定であること、労働日は、シフト制で、配送会社が決めていること、毎朝出勤時間は8時厳守で、退勤時も必ず倉庫に戻ってきて業務日報を書かなければならないこと、不在時の対応、置き配に関する指示、クレーム対応指示、他の配達員へのフォローに入るなどの各種業務指示が日常的になされていること、クレームがあった場合、始末書の提出やペナルティが課せられることがあることなどです。
その結果、2023年9月、横須賀労働基準監督署は、Aさんは、個人事業主ではなく労働者であり、休業補償給付を支給するとの決定(労災認定)を出しました。
5 労災認定の意義と今後の活動
この労災認定は、Aさんの救済はもちろん、同じく横須賀の現場で働く配達員たちについても、しっかりと労働法で定められた基準を守らせることにつながります。
また、日々受けている相談内容から、全国各地のアマゾン配達員は、Aさんたちとほとんど同じように働いていることが分かってきました。
そのため、この労災認定は、全国のアマゾン配達員の苛酷な労働環境に、風穴を開けるものです。
今後は、この労災認定を活用し、横須賀の現場はもちろん、全国各地のアマゾン配達員の皆さんの労働環境の改善のため、仲間の弁護士と協力して、活動していきたいと考えています。
読者のみなさんにも、ぜひ、ご注目いただき、消費者の便利のため、懸命に働くアマゾン配達員の待遇改善にご協力いただければ幸いです。
なお、この労災事件の代理人(敬称略)は、井上幸夫、菅俊治、平井康太、本間耕三(以上、東京法律事務所)、棗一郎(旬報法律事務所)、木下徹郎、濱本凌汰、河潤美(以上、東京共同法律事務所)、竹村和也(東京南部法律事務所)、中村優介(江東総合法律事務所)、私です。






