コラム

アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール【2024年事務所ニュース 夏号】

弁護士 杉本  朗

 裁判官の身分は憲法で保障されていて、簡単にはクビになりません。心身の故障のため職務を果たすことができなくなったと司法裁判所の裁判により認められたときを除き、弾劾裁判所の罷免(クビ)の判決を受けない限り罷免されることはありません。
 まず、衆議院と参議院のそれぞれの議員の中から10名ずつ選ばれた合計20名の訴追委員で組織される訴追委員会が、その裁判官の罷免の訴追をすべきかどうかを審議します。
 その審議で罷免の事由があってその裁判官の罷免の訴追をする必要があると判断したときは、弾劾裁判所に対して訴追状を提出して罷免の訴追をします。
 弾劾裁判所は、衆議院議員7名と参議院議員7名の合計14名の裁判員で構成されています。
 弾劾裁判所では、その裁判官を罷免するか罷免しないかの二択で判断がなされます。罷免されるとその裁判官は法曹資格を最低5年間失い、裁判官の身分を失います。また、検察官や弁護士となる資格を失うほか、公証人となることも制限されます。さらに、調停委員、司法委員、参与員にもなれません。ちなみに退職金を支給されないほか、年金も制限されます。
 さて、5年経つと自動的に法曹資格が回復するかというとそうではありません。その裁判官が改めて弾劾裁判所に資格回復の裁判を求めて、そこで資格回復の理由があると認められて初めて法曹資格が回復します。
 制度設計としては、かなり厳格に設計がなされているようにも思えますが、たとえば、弾劾裁判には不服申立が出来ず、事実上の一審制となっていることについて、私は疑問があります。一発で決めてしまうというのは、人間は間違えるかも知れないことを看過していないでしょうか。また罷免となった場合の重い効果を考えれば、再度検討する余地があってもいいのではないでしょうか。などということを今年に入ってから考えていました。