コラム

SNS型投資詐欺に関する取り組み

1 はじめに

インターネット・SNSの急速な発達、そして、政府による副業・兼業、投資の促進等を背景に、近時、インターネット・SNSを経由した、投資詐欺、情報商材、副業詐欺等が急増化しています。

その中でも、特に、「SNS型投資詐欺」や「ロマンス詐欺」と呼ばれる、SNS等を通じて対面することなく、交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ、投資金名目やその利益の出金手数料名目などで金銭等をだまし取る詐欺が多く見られます。中には、ダミーの投資サイトやアプリが用意されているケースも多く、手口は巧妙です。

私は、悪質サイト被害対策弁護団神奈川の一員として、この種の消費者問題に多く取り組んでいますので、その活動の一端をご紹介いたします。

 

2 SNS型投資詐欺の特徴

SNS型投資詐欺は、投資金名目で送金した後、出金をしようとしても、次々と追加の送金を要求された後、連絡が取れなくなることが通常です。そのため、情報商材や副業詐欺等の事案と比較して、詐欺性、不法行為性は認められやすいといえます。

しかしながら、SNS型投資詐欺においては、勧誘者の住所や本名が明らかでなかったり、ダミーサイトやアプリの運営会社は海外であったりするなど、加害者の特定に困難を伴います。

これらに加え、送金手段が暗号資産であることも多いことも相まって、SNS型投資詐欺において、もっぱら問題となるのは、具体的な回収方法です。

 

3 回収方法

(1)概要

SNS型投資詐欺は、送金方法に着目して、主に、①銀行振込型と②暗号資産型に分かれます。結論から言えば、現状(2026年7月時点)、②暗号資産型は回収可能性がほとんどない一方、①銀行振込型は少ないながらも可能性はある、という状況です。

回収先として送金先口座の名義人を念頭に置いているのは、回収可能性の観点、および、加害者の特定の観点(上述のとおり、勧誘者、運営会社は判明しないことが多い。)です。

 

(2)銀行振込型

まず、①銀行振込型については、送金先口座自体は、日本国内の銀行口座への振込みがほとんどです。「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(通称:振り込め詐欺被害救済法)」に基づき、送金先口座に対し、口座凍結(法3条1項)の申請を行います。

その後、送金先口座に1000円以上の残高が残っている場合には、債権消滅手続を経た後(法5条及び7条)、分配金支払手続(同法8条ないし17条)により、届け出た被害者らに対し、その被害金額に応じて、按分されることとなります。もっとも、被害者は多数存在することが多く、たとえ送金先口座に一定の残高があったとしても、一人あたりの分配額は少額となってしまうことが通常です。

また、債権消滅手続の期間中に、他の被害者が送金先口座に対する仮差押えや送金先口座の名義人対し訴訟を行っている場合には、「権利行使の届出」がなされたとして(同法6条)、債権消滅手続が終了し、分配金支払手続が行われず、これらの法的手続を行った被害者が回収することとなります。

そのため、送金先口座に残高が残っている場合には、当該口座に対する仮差押えを行うことが重要となります(やむなく仮差押えを行えない場合には、本訴を提起した上で、金融機関にその旨通知するとともに、迅速な訴訟追行を行います。)。横浜地裁本庁の場合、担保金は、請求金額の1~2割程度を要求されることが多いです。

凍結口座の残高は、凍結後一定期間経過した後(2~3か月が多い。)、預金保険機構の「振り込め詐欺救済法に基づく公告」というページで確認できるとともに、弁護士会照会により回答する金融機関が多くあります。

私が相談を受けた際には、基本的に、口座凍結→弁護士会照会→仮差押え→本訴→執行の順番で取り組んでいます。

 

(3)暗号資産型

暗号資産の取引においては、取引ごとに取引ID(トランザクションID)が振られており、取引履歴がインターネット上に公開されています。そのため、これを見れば、送金元アドレス、送金先アドレス、送金日時、送金した暗号資産の種類及び金額等が分かります。

これらを確認するための無料ツールとして、「Bitquery」や「BLOCK CHAIR」などがあります。しかし、送金先アドレスが、bitFlyer、GMOコインなどの「暗号資産交換業者」(暗号資産及び口座の管理会社(資金決済法2条7項))と紐づいておらず、どの業者が管理する、誰のアドレスか分からないことが多くあります。預金とは異なり、どの業者も管理していない、いわば‘野良口座’(「アンホステッドウォレット」)が存在するのです。

また、暗号資産が送金先アドレスで換金されていることは少なく、最終的に暗号資産を集約させている口座に行き着くまでの間に、いくつかのアドレスを介在させている場合がほとんどです。集約されている口座の紐づけが判明したとしても、海外の暗号資産交換業者と紐付いているケースが多数です。海外の暗号資産交換業者からの回収は、現時点では困難と言わざるを得ず、大きな課題となっています。

 

4 まとめ

このように、銀行振込型は回収可能性がゼロではない一方、暗号資産型については厳しい状況となっています。中には、正確な見通しを待たずに、あるいは非弁業者と連携して、誇大広告を行っている弁護士や調査会社も存在しており、二次被害も顕著です。

回収可能性を高めるためには、早めに動くことが重要です。「怪しいな?」と思ったら、まずは、当事務所までご相談ください。