事例紹介

建物明渡しの事例2

相談者の方のお父様は,30年くらい前に建てた建物を,自営業者の方に店舗として使用する目的で賃貸借していました。仲介してくれた業者が縁故者だったこともあり,契約書は非常に簡潔なものでした。
お父様が亡くなり,相談者の方がこの不動産を相続しました。建物が老朽化していて危険だから取り壊したい,賃料が著しく安いことも知りました。
弁護士としては,旧法の賃貸借契約においては,賃料不払い以外の理由での明け渡し要求は正当な事由がない限り認められないのが判例なので,そのことを率直にお伝えしました。
しかし,明渡しをしてもらって建物を収去して土地を有効活用したいという相談者の要求も大切です。
そこで,弁護士は,当初は,民事調停を申し立てました。この手続の中で,これまで分かっていなかった賃借人の事情がかなり分かってきました。
調停の後,賃料相当額と実際の賃料の差額の支払いと明渡しを求めて,訴訟を提起しました。提訴後まもなく,賃借人の方から,熟慮の末,ご自分の事業継続を5年後までと考えているからその時点での明渡しではどうかという提案をしてくれました。
賃貸人もこれを受け入れて,和解が成立しました。

  • それぞれの事例は、事案特定を避けるため、実際の事例を一部抽象化、加工しております。