事例紹介

定期建物賃貸借契約であることを理由に受けた建物明渡請求を棄却させた事例

依頼会社は,飲食店を経営するため,テナントビルの2階を通常の賃貸借契約で賃借していました。その後,店舗を拡張するため,同じビルの3階を賃借しましたが,その際,ビルオーナー会社から,定期建物賃貸借(定期借家)契約への記名押印を求められ,これに応じてしまいました。
その後,定期建物賃貸借契約期間満了時期となり,依頼会社は,引き続き3階部分を賃借し続けたいにもかかわらず,ビルオーナー会社は,定期建物賃貸借契約期間満了を理由に,建物明渡し請求訴訟を提起しました。依頼会社は,2階部分だけ賃貸借契約が残っても,これまでのような営業を継続することができません。
借地借家法で保護され正当事由がない限り更新を拒絶することができない通常の賃貸借と異なり,定期建物賃貸借契約では,賃貸人が再契約に応じない限り,建物を明け渡さなければなりません。
しかし,このケースでは,最高裁判所の判例にしたがって,定期建物賃貸借契約締結に先だって,契約書とは別に,契約の更新がなく期間の満了により建物の賃貸借が終了することを説明する文書が交付されていなかったことを主張した結果,定期建物賃貸借契約であるとのビルオーナー会社の主張が排斥され,建物明渡請求が棄却されました。
依頼会社は,その後もこのビルの2階と3階で飲食店を経営し続けています。

  • それぞれの事例は、事案特定を避けるため、実際の事例を一部抽象化、加工しております。