巻頭言【2025年事務所ニュース 新春号】
二〇二四年九月二六日、無実を訴え続けてきた元死刑囚の袴田巌さんの再審事件で、静岡地方裁判所は無罪判決を言い渡しました。判決では、死刑判決の根拠となった三つの証拠を捜査機関による捏造と断じて排除したことが無罪の理由とされました。
事件から五八年、死刑判決が確定してから四四年が経過し、袴田さんは八八歳になっていました。
死刑制度は取り返しのつかない刑罰です。いつ死刑が執行されるかの恐怖を受け続けた毎日がどのようなものだったのかは想像を絶します。そして、袴田さんの人生の大半が、無実を訴え死刑判決を覆す再審を求める闘いだったことに思いを馳せるとき、一人の人間の一生を左右するかもしれない裁判に携わる者としての責任を改めて強く考えざるを得ません。
袴田さんが挑み続けた再審は刑事訴訟法に定めがありますが、わずか一九条にとどまり、証拠開示の基準や手続きが明確ではなく、具体的審理は裁判所の裁量に委ねられています。再審を認めるということは、自らの(組織の)誤りを認めることにほかならず、どうしても消極的に運用され時間もかかってしまうことが、えん罪被害者の救済を阻む障害となっています。再審法を改正することの必要性はこれまでも訴え続けられてきましたが、袴田さんの長きにわたる苦しみを考えるにつけ、今こそ改正に踏み込む時に来ています。
裁判は人間によって行われるものです。人間である以上間違うこともあります。間違ったことをなかったことにするのではなく、間違った場合にどうするかを組み込んだ裁判制度・法体系を築くことが必要なのです。






